抄録
地球温暖化による気候変動や東日本大震災を受けて,家計部門および企業部門とも,近年,自然災害リスクを保険等により縮小・回避したいとする社会ニーズが高まっている。
一方,自然災害リスクは保険商品化することが困難な側面を持つことから,リスク管理手法としては,定量的なリスク量(VaR)計測の他,ストレステストとの併用が有効とされており,経営陣主導による厳格なリスク評価と対応策実施が求められている。なお,複雑化する自然災害リスクの評価・管理手法を高度化していくには,今後一層,産官学の連携が必要となろう。
ERMの観点からも,巨大自然災害をはじめとした「リスク管理態勢の強化」と「リスク対比でのリターン極大化(資本の効率的活用)」の双方を実現し,財務の健全性維持と企業価値の最大化を図ることが,損害保険会社の重要な経営課題となっている。