抄録
中国の大学は,日本に比べ保険教育を広範かつ戦略的に提供している。「保険学部」を有する名門大学や保険学の学位を授与する大学が数多く存在し,また学部,博士前期課程,博士後期課程の一貫した保険教育を行う大学も見られる。更に,保険数理分野の教育を重視し,金融の中で保険の立ち位置を確立すると共に金融イノベーションを保険分野から起こせる素地も作ろうとしている。中国の大学は保険業界に高度専門人材の提供を行う役割を果たしていることから,アジアでの国際競争において日本の大学や日本保険学会は危機意識を持って今後の教育戦略を考え直す必要がある。
また,個人の能力を最大限引き出すためには,中国等の学生に比べ遅い日本の学生の将来の進路の決定時期を前倒しにすることが重要である。将来のライフコースの早期決定を促す,大学1回生から2回生向けの新たなライフサイクル教育を具体的に提案する。