抄録
わが国の生保は1990年代後半にかけて未曾有の生保危機に陥った。その元凶は深刻な逆ざや問題にあった。だが,その問題を克服する手法として資産負債総合管理(ALM)がある。具体的には資産側デュレーションの長期化戦略からデュレーション・ギャップを縮小化させ,金利変動リスクをゼロにする手法である。本論文では実際に主要生保を対象にしながら資産側デュレーションを計測し,生保危機が発生した頃から徐々に上昇していることを見出している。さらに金利変動リスクに変化が生じているか否かを見るため,生保の株価と金利の関係を計測している。金利に対する株価の変化は時間の経過とともに薄れ,最近に至っては有意な関係が見出されていない。これにより今日の生保はALMを実践し,金利変動リスクを解消しているといえる。