保険学雑誌
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告知義務違反における故意又は重過失に関する裁判例の分析と検討
李芝姸・訳
永松 裕幹
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2014 年 2014 巻 626 号 p. 626_107-626_126

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抄録
告知義務違反における重要な事実の不告知についての故意又は重過失の認定に際しては,故意又は重過失の意義をどのように解し,いかなる要素が評価根拠事実又は評価障害事実となるかが問題となることから,裁判例を類型的に分析し,故意又は重過失を導く要素につき検討することが本論文の目的である。
重過失の意義について明示した裁判例は少ないが,保険法の制定過程に鑑みれば,重過失を「ほとんど故意と同視すべき著しい注意欠如の状態」と解することになりそうである。裁判例における重過失の認定に際しては,被保険者の現症・既往症の重大性及び自覚症状,医師からの説明及び健康診断の結果通知の内容並びに医師の診察・治療・投薬等及び健康診断の結果通知等の時点から告知時までの時間的近接性が基本的な要素となっている。
また,保険者は,告知義務制度の意義や告知事項の重要性を告知義務者に十分に説明し,質問内容が分かりやすいものとなっているかに配慮すべきである。
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© 2014 日本保険学会
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