抄録
本稿は,死亡保障領域の生命保険需要決定要因を探索的因子分析及びパス解析により実証的に考察した。考察の結果,生命保険需要の起点となるリスク認知はライフサイクル型,遺産動機型,個別課題型の3リスク認知に分類された。ライフサイクル型及び遺産動機型リスク認知は,経済準備意向を経て生命保険需要に正の影響を与える。これに対して個別課題型リスク認知は,生命保険需要に直接正の影響を与えるため,他のリスク認知と不整合に需要要因となり過剰・過少保険を生む可能性を持つ。
経済準備意向は預貯金需要と生命保険需要へ正の影響を与える。その上で預貯金需要が生命保険需要へ正の影響を与えることから,預貯金需要は生命保険需要の先行要因となることが確認された。預貯金は限定的問題解決の段階で認知的な近道により需要され,生命保険はその延長線上にある拡張的問題解決段階で合目的的に需要される。