抄録
本稿では、「発達支援とは誰を支援することか」という問いを立て、2016 年から2020 年までに刊行された学術論文のうち「発達支援」というキーワードで抽出された論文タイトルを対象に、そのタイトルがどのような語句によって構成されているかを概観し、さらにそこに含まれている「人物」がどのような人たちなのかを検討することを目的とした。2021
年6 月1 日に「CiNii Articles」によって検索された結果、1993 年以降1,321 編の「発達支援」をタイトルに含む論文があることが明らかとなった。これらの論文数の推移ならびに2016 年から2020 年までの429 編のタイトルの抽出・分類の結果、公的に「発達支援」「児童発達支援」が、発達障害者支援法の制定や2012 年の児童福祉法改正によって、政府の法律用語として用いられるようになる中で、「発達障害者」や「特別支援教育」を中心とした文脈の中で論文数が増加してきたことがうかがえた。一方、人物カテゴリの検討からは、「発達障害者」以外の障害種や高齢者、患者など、あるいは、支援者である看護職に対する「キャリア発達支援」に関する論文も散見された。日常的文脈における支援が、日常的支援者と非日常的支援者という支援者自身の「(キャリア)発達」をも包含することからも、支援―被支援という一方向でない支援対象の枠組みが必要であることが指摘された。