抄録
本稿は,保険法2条1号の「保険契約」の意義を再検討するものである。結論として,保険法学説の通説的理解と同様に,保険料と保険給付の間に給付反対給付均等原則と収支相等原則が成り立つことが保険法2条1号の「保険契約」の「要素」であると理解する。しかし,従来の議論のように保険制度の存在を「暗黙のうちに前提」とすること,あるいは保険法2条1号には「書かれざる要件」があることを根拠とするものではない。保険法の条文構造上,ある取引が適用対象となるか問題となるときには,まず保険法2条にいう「保険」の仕組みをとっているかを検討すべきである。また,保険法は共済契約を適用対象としたことから,共済の本質を歴史的・社会的に捉える立場の議論を踏まえて,「保険契約」を再検討した。伝統的な保険法学の論理に基づく保険法のもと,共済の本質とされるその歴史的・社会的な性格は「保険契約」の解釈に影響を与えるものではない。