保険学雑誌
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責任開始期前発病不担保条項の改定とその課題
長谷川 仁彦
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2016 年 2016 巻 634 号 p. 634_47-634_62

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抄録
生命保険約款における責任開始期前発病不担保条項は,契約締結後に危険選択を行って,告知義務制度によっては果たせない危険の選択を補完する制度であると説明されてきた。その結果,責任開始期以降に高度障害状態に該当したとき,仮に,保険者が保険契約者側からの告知等により高度障害状態となる原因を知っていたとしても,それは責任開始期前発病として支払要件を満たされないとされてきた。
多くの保険者は,保険法に合わせ保険約款を改定する際に,責任開始期前発病不担保条項を告知義務と関連して改定した。告知等によって保険会社が知っている事実を原因として高度障害状態となったときは,責任開始期以降の発病と擬制する旨の規定が設けられた。このような不担保条項の改定の結果,責任開始期前発病の事実が告知書の非質問事項であるときは,すべて責任開始期前発病不担保とされることになる。しかし,公平性の観点から傷害疾病保険と生命保険とでは危険の発生原因が異なるので,傷害疾病保険についての告知書の質問事項を改定する必要があり,これにより無用な紛争を未然に防止し,訴訟等も回避することができる。
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© 2016 日本保険学会
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