抄録
平成26年改正保険業法では,団体保険の被保険者に対する行為規制,加入勧奨に係る規制の適用関係など,実務を踏まえた保険募集の基本的ルールの創設・明確化が図られた。このことは団体保険の適正な取扱い,加入勧奨の一層の品質向上に取り組み,被保険者保護を充実させていくうえで,大きな意義がある。また,所属保険会社等の賠償責任を定める保険業法283条は,適用場面に「加入勧奨」は追加されていないが,加入勧奨の考え方が明確化されたことによって,形式的に加入勧奨に係る行為であることをもって,同条の適用対象外と結論付けることは適当ではなく,加害行為の主体,目的,内容等を勘案のうえ,適用の有無を判断する必要があると思われる。保険会社・保険募集人は改正された規制に則った募集活動に取り組むことはもとより,改正が行われなかった規制についても改正に伴う影響の有無や規制の趣旨に留意のうえ,慎重な運営に努める必要がある。