抄録
保険業法の改正により導入された情報提供義務の一つに,乗合代理店のみに課される情報提供義務がある。乗合代理店という代理店の属性に着目し,それ以外の代理店には課されない情報提供義務を課すことは,保険業法における規制の態様として新たなものであるだけでなく,金融分野における規制の態様としても新たなものである。さらに,その内容の点においても,自らが取り扱っている商品の中に比較可能な複数の商品が存在するという情報や,比較可能な複数の商品のうち自らが一部の商品を推奨することとした理由という乗合代理店の主観的事情に関する情報という,個別の商品内容にとどまらない事項を提供すべき情報としている点で,これまでにない新たなものとなっている。このような新たなタイプの情報提供義務が導入されたことによって,保険以外の金融分野の実務等への影響が生じることも想定される。