抄録
本稿は,弁護士の不誠実行為によって被害を被った依頼者を保護する制度について,諸外国の概要を踏まえて,現在,日本弁護士連合会で検討されている依頼者保護給付金制度について,その導入の妥当性,保険業法上の保険業に該当するか等を検討するものである。
依頼者保護給付金制度のみを近視眼的に批判するのではなく,依頼者保護のための制度全体として考えれば,弁護士の信頼低下の歯止め,弁護士自治の堅持のためにも,この制度には,一定の合理性があると考える。
保険業法上の保険業該当性に関しては,見舞金の財源を一般財源とし,さらに給付要件を厳格化した上で,求償制度を導入しない等の工夫によりある程度解決されていると考える。またこの制度の趣旨や保険業法の監督の趣旨をも考えれば,保険業に該当すると考える必要はない。税法上の問題については,給付を受ける依頼者にとっては所得には該当しないため課税対象にもならないと考える。