保険学雑誌
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企業からの個人情報漏洩と保険による損害填補
-損害の分類と保険の法的問題を中心に-
千手 崇史
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2017 年 2017 巻 638 号 p. 638_67-638_86

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抄録

企業が保有する個人情報を漏洩させた場合の謝罪・賠償額は巨額にのぼるため,保険への加入を検討することも多い。しかし,填補すべき損害の性質や保険の法的な問題にはまだ未解明の部分が多い。そこで,本稿は,重要な事件や現行の保険商品を題材に検討を行った。その結果,まず,謝罪費用等「一次損害」は額や上限が定まりやすいので保険が関与しやすい反面,現行の主要保険商品ではまだ十分な額の給付がなされていない問題が判明した。一方,訴訟を経て支払う賠償金など「二次損害」は,保険事故をどう捉えるかの他に,全容がつかめず拡大する性質にどう対処するかが問題となる。検討の結果,被害者全員が請求をしないという前提に立つと,現行の主要保険商品で十分にカバーできるが,個人情報保護法改正による請求・訴訟や賠償額の増加可能性に注意が必要である点,相当因果関係がある損害はどこまでなのかを理論的に解明するのが課題である点を指摘した。

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© 2017 日本保険学会
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