抄録
保険法学におけるフランス法研究は,各論的内容を中心に行われている。しかし,日仏比較法研究をするためには,より総論的内容の検討を行う必要があり,フランスにおける保険契約の法的構造を明らかにする試みがなされなければならない。
フランスでは,近時,保険者の債務は何かという,かつて我が国でなされた議論がなされている。リュック・マイヨーは,近時,新たな見解を示したが,その最大の特徴は保険者の債務を「保障債務」と「支払債務」に区別することであり,それは保証の分野で「保証」と「支払」を区別したクリスチャン・ムリーの見解から大きな示唆を受けたものである。この保険法学におけるこの議論の背景には,フランス民法学における「保証」の研究成果のほか,我が国の民法学における「担保する給付」の研究成果がある。