保険学雑誌
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【保険法制定10年】特集
自賠法16条の9の解釈をめぐる諸問題
—最高裁平成30年9月27日判決を中心として—
植草 桂子
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2018 年 2018 巻 643 号 p. 643_93-643_115

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抄録

保険法において保険給付の履行期に関する規定が新設されたことに伴い,自動車損害賠償保障法(自賠法)16条1項に基づく被害者の直接請求に対する保険会社の損害賠償額支払債務の履行期についても,自賠法16条の9が新設され,第1項で保険会社は「当該請求に係る自動車の運行による事故及び当該損害賠償額の確認をするために必要な期間が経過するまでは,遅滞の責任を負わない」旨定められた。

自賠法16条の9は,訴外での直接請求を前提にした規定とも考えられ,訴訟上で直接請求が行われた場合の履行期については解釈上疑義が生じていたが,今般,この問題が争点の一つとなった訴訟において,最高裁判決(最高裁平成30年9月27日第一小法廷判決 1))が言い渡された。今後,訴訟上で直接請求が行われた事案については,最高裁判決の判示を踏まえ裁判所が履行期を判断することになろうが,履行期は「原告である被害者側が損害を立証する資料を全て提出し,保険会社がその内容を確認した時点」や「口頭弁論終結時」を基準として,事案の個別具体的事情に照らし決定されるべきと考える。

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