保険学雑誌
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第三者によるモラルリスクと実質的当事者の確定
板東 大介
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2019 年 2019 巻 645 号 p. 645_157-645_186

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抄録

最判H14.10.3(民集56巻8号1706頁)は,保険契約者兼保険金受取人が法人である生命保険契約に関する事案の下で,第三者の故意による免責を認めるための規範を定立した。同最判は「実質的支配」及び「利益享受可能性」という2つの考慮要素に照らして,モラルリスク事案における「実質的当事者」の確定に関する判断基準を示したものと理解することが可能であり,その趣旨は,保険契約者または保険金受取人が自然人である保険契約(個人契約)にも妥当する。同最判の前後の下級審裁判例は,個人契約についても,「利益享受可能性」を基準に「実質的保険金受取人」を認定し,「実質的支配」を基準に「実質的保険契約者」を認定している。後者の判断基準について,私見は,🄐保険契約の締結,🄑保険料の負担,🄒保険金受取人の指定等,を基準とする裁判例を支持する。また,上記の判断基準は,重大事由解除,公序良俗違反が争点となった裁判例にも妥当する。

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© 2019 日本保険学会
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