2019 年 2019 巻 645 号 p. 645_23-645_39
大規模自然災害によって,個人の生活にどのような衝撃をもたらすか,その衝撃を緩和する手段として,どのようなものがあるか,その手段が,個人のリスクファイナンスである。個人のリスクファイナンスには,公的支援を経たうえの個人としての防衛手段である。それは,保険や共済が中心となる。すなわち,火災保険,地震保険,建物更生共済,フェニックス共催,民間損保の災害に関する保険である。
本稿では,上記の保険や共済の現状を紹介し,今後の個人のリスクファイナンスの課題を検討している。その課題として,第1に,大規模洪水リスク・土砂災害リスクが気候変動によって多発・恒常化した場合の対策は必要か,第2に,大規模地震リスクに対して,地震保険,地震補償保険リスタ,火災保険地震危険等上乗せ特約,火災保険地震火災特約などの合計保険金で,住まい・生活の再建に十分か,第3に,大規模地震リスクに対するマンション居住者に地震保険の特有なリスクがあり,地震保険未加入リスク,エレベーターや受水層・高架水槽の付属設備の不担保リスク,地震後の解体売却か,再建かの合意形成ができないリスクがあり,それらのリスクにどのように対処するのかが課題になる。さらに,地震保険の再保険スキームの総支払限度額を超えるリスクに対してどのように対処するのかという課題にも言及している。