2021 年 2021 巻 652 号 p. 652_143-652_168
車両保険における免責事由として,通常「故障損害」が挙げられているところ,近年における技術の発達等を踏まえて,自動車保険における故障免責条項についての議論を深める必要がある。議論の前提として,現在の約款における故障損害の意義や趣旨を確認すると,問題点が浮き彫りとなる。そこで,かかる問題点を解決するために,故障の一般的な意義や故障免責条項が約款に規定された経緯について,ひも解いていくと,不可解な事情が見えてくる。もっとも,裁判例や他の法令における故障等の意義を確認するも,明確な規範などは見えてこない。そこで,現状の故障損害の意義などを分析的に検討すると,論理矛盾や実態との乖離が認められることが判明した。そのため,故障免責条項の趣旨を再検討し,経緯等に遡りつつ,あらたな定義づけを試みた。最終的に,自動車保険における故障免責条項の必要性について,改めて考察のうえ,筆者の意見を述べた。