保険学雑誌
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「レジリエンスから見た地震リスクと地震保険」—令和3年度大会シンポジウム—
家計地震保険にかかる法制度の将来展望と法的課題
𡈽岐 孝宏
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2022 年 2022 巻 656 号 p. 656_55-656_84

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抄録

地震保険に関する法律に基づく狭義の地震保険制度は,私保険による復興の仕組みとして,家計の地震災害からの経済的回復・復元(レジリエンス/resilience)に寄与してきた。狭義の地震保険契約の付保制限(法2条2項4号)は,個々の家計にてん補不足を生みその復興の障害になるという意味における災害レジリエンスに対する負の側面を有するが,他方,東日本大震災等の後,とくに民間の危険準備金残高が大きく毀損している現状の地震保険制度それ自体の強靭性,持続性確保の観点,ないしそのことにより社会全体の災害レジリエンスを高めるとする観点においては正の側面を有し,その限りでこの付保制限を維持することが望ましい。狭義の地震保険制度それ自体をフルスペック化しないことで家計に生じる負の側面(てん補不足)への対応は,国ではなく,民間の力に委ねるのが,公平性の観点等から望ましい。狭義の地震保険制度に追加して,民間の上乗せ商品等を活用し,Totalの災害レジリエンスを向上させるべきである(広義の地震保険制度の拡充)。そして,広義の地震保険制度の拡充を前に現れる法的課題として,狭義の地震保険契約の法的性質論,ないしそれとその外側にある民間保険商品との重複保険の問題がある。

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© 2022 日本保険学会
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