地震保険等,災害保険の加入率を高めプロテクションギャップを縮減することは,保険が社会的役割を果たすという観点から重要な政策課題である。大災害をめぐる人々の保険加入行動の実証的な理解は,EBPM(証拠に基づく政策立案)の出発点として重要であり,そのための有用な観察事実として,長年,研究者が注目してきたのは,大災害前後の非対称な保険需要という現象である。本稿の目的は,大災害をめぐる個人の保険需要に関する研究動向を整理することで,今後の研究の方向性を展望することにある。特に,わが国の2つの大震災—阪神淡路大震災と東日本大震災—に注目した研究(Kamiya and Yanaseó 2019)の紹介を通じて,「地震保険統計」を研究利用することの有用性についても言及する。