2022 年 2022 巻 657 号 p. 657_1-657_20
本共通論題は,地震リスクを題材に,企業損害保険制度の課題を討議するもので,本稿では,問題提起として主要な論点を示す。損害保険は,地震リスクに対する各種のリスクファイナンシングの中核となるもので,その点はこれからも変わらないであろう。現状では,利益損失リスクへの保険手当てが進んでいるとはいえず,利益保険の活用が望まれる。損害保険の利用を更に促進していくためには,保険金支払いに時間と費用を要する損害てん補という方式に工夫が必要で,その柔軟化は重要な検討課題といえる。巨大リスクに対する対処をさらに進めるためには,共同保険についても多様な方式の研究が必要で,グローバル市場の活用も課題となる。更に,企業のリスクマネジメントの高度化も重要で,リスクマネジャーの設置が有益と考えられ,大学等は,専門人材の育成にも力を入れる必要がある。