保険学雑誌
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【コロナ禍における保険業の役割と今後の展開】特集
米国最新判例にみるCOVID-19と事業中断保険
森 明
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2022 年 2022 巻 659 号 p. 659_151-659_176

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抄録

2019年暮れに中国湖北省の省都である武漢で突如発現した新型コロナウイルス感染症(COVID-19:新型冠状病毒感染症)は年明けの2020年初から世界中に蔓延して感染爆発(Pandemic)を引き起こした。そして今も猶なお,政治,経済,文化等の社会生活に多大な影響を及ぼしている。本稿ではこの大難に関連する米国での事業中断保険訴訟(Business Interruption Insurance Litigation)について解説する。保険大国の米国では,損失がCOVID-19の「直接且つ物理的結果か否か」という争点のみで,延々と各州又は各連邦巡回区単位で二千数百件の裁判が行われている。そして極めて少数の例外を除き上訴審判決は全て保険者有利のものである。更に驚くべきは,同種・同類の事案が本稿執筆中の2022年9月に於いても提訴され続けているということである。米国は司法制度が英国とは異なり,亦,最高裁判例で保険法は州法に任せることとされているので,本件の一般原則に関する最終結論はいつどのような形で出されるのか予断を許さない。今後 COVID-19のような新奇の危険が発生した場合,米国でこれを保険(共同保険と再保険を含む)という制度で対応するとすれば,英国のように,金融行為規制機構の設立と全米を対象とする保険法を制定するしかないと思われる。

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© 2022 日本保険学会
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