日本関節病学会誌
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原著
前十字靱帯再建術後の血清CRPと手術部位感染の関連についての検討
鈴木 夏美品川 良太小倉 誉大高橋 謙二佐藤 慶一東 秀隆
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2021 年 40 巻 1 号 p. 29-34

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抄録

目的 : 手術部位感染 (surgical site infection : 以下, SSI) は重大な合併症のひとつであり, 早期診断, 早期治療が重要である。本研究の目的は, 膝前十字靱帯再建術 (anterior cruciate ligament reconstruction : 以下, ACLR) 後の血清C反応性蛋白 (C-reactive protein : 以下, CRP) がSSI発症の予測に有用か否かを検討することである。

方法 : 対象は2012年6月から2018年11月の期間, 当院にてACLRを施行した患者1,149例 (男性545例, 女性604例, 平均年齢26.9歳) である。術後1回目 (3〜5日目) と2回目 (6〜8日目) の血清CRP値 (mg/dL) を後ろ向きに抽出した。米国疾病管理予防センターのガイドラインに基づいて術後30日以内のSSI発症例をSSI群, 発症しなかった例を非SSI群とした。両群における術後1回目と2回目のCRP値をMann-Whitney U検定を用いて比較した。さらに1回目から2回目のCRP値の増加がSSIを予測できるかについて感度, 特異度を算出した。有意水準は5%未満 (P<0.05) とした。

結果 : 19例 (1.7%) が術後平均16.5日でSSIを発症した。12例は表層感染で, 7例が深部感染であった。術後1回目のCRP値は, SSI群3.86±2.13, 非SSI群3.52±1.99, 術後2回目のCRP値は, SSI群2.11±2.65, 非SSI群1.03±0.81であり, それぞれ両群間に有意差を認めなかった (P=0.47, P=0.16)。CRP値の増加によるSSI発生予測に関する感度, 特異度はそれぞれ15.8%, 99.4%であった。

結論 : ACLR術後早期のCRP値とその推移は, SSI発生予測に有用ではないことが示唆された。

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