日本関節病学会誌
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原著
母指CM関節症Eaton Stage Ⅳに対するソフトアンカーを用いたHybrid変法
川崎 恵吉酒井 健坂本 和歌子久保田 豊根本 哲也稲垣 克記
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2021 年 40 巻 4 号 p. 392-397

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抄録

目的 : 母指手根中手 (CM) 関節症のStage-Ⅳは, 舟状大菱形骨間関節 (STm関節) 面以外に, 舟状小菱形骨間関節 (STd関節) 面にも関節症変化をきたしているかどうかの評価が重要である。そこで我々はこれらに対して, コンピュータ断層撮影 (CT) と磁気共鳴撮像法 (MRI) を用いて評価を行い, 変性を認めた場合には, 従来から行ってきたLigament reconstruction with tendon interposition法 (LRTI法) とSuture-Button suspensionplastyを併用したHybrid suspensionplastyに加え, 小菱形骨の近位関節面の軟骨をノミで切除し, 有頭骨に打ち込んだソフトアンカー (JuggerKnotTM 1.0mm Mini) の縫合糸に, FCRの半裁腱の腱球を縫着し, STd関節内に固定している。このHybrid変法を行った8例の治療成績を調査した。

方法 : 2019年以降, 母指CM関節症のStage-Ⅳに対して, Hybrid変法を行い, 6カ月以上経過観察しえた8例を対象とした。CTおよびMRIで, STm関節に加えSTd関節の変性を全例に認めた。平均年齢は69.9歳, 男性1名, 女性7名, 平均術後経過観察期間は8.1カ月であった。これらの症例に対して, 画像評価と臨床成績を調査した。

結果 : 疼痛視覚的評価スケール (VAS) とつまみ力は, 術前より最終診察時には有意に改善していた。大菱形骨腔長は, 術直後に比べて24.3%短縮したが, 術後のCTによる小菱形骨切除間隙の平均は3.4mmと維持されていた。CTによる橈骨月状骨角 (RL angle) は, 術前後で有意な差はなかった。

考察 : 母指CM関節症には術前のSTd関節の評価が重要であり, 我々のHybrid変法は, 母指CM関節症Stage-Ⅳに有用と思われた。

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