2023 年 42 巻 4 号 p. 340-346
目的:内側型変形性膝関節症(KOA: knee osteoarthritis)の運動力学的特徴に関しては,いまだ解明されていない部分が多い。本研究の目的は,重症度別モーメント寄与率の特徴を明らかにすることである。
方法:当院で歩行解析を実施し得たKOA症例77例93膝(北大KOA重症度分類;Stage Ⅱ:19例22膝,Stage Ⅲ:26例30膝,Stage Ⅳ:17例24膝,Stage Ⅴ:15例19膝)を対象としてStageごとに群分けした。全症例に対し,膝関節可動域,歩行速度,単純X線所見を評価した。また,ポイントクラスター法に準じた光学式モーションキャプチャー技術と逆動力学計算により,床反力ピーク時における外的膝関節モーメントの総量(TJM: total joint moment)とそれに対する各モーメントの寄与率を求めた。
結果:歩行速度と膝屈曲可動域はKOAの重症例ほど有意に小さかった(P<0.05)。KOA重症例では,femorotibial angleは大きく,TJMは大きく,TJM第一ピーク時における各モーメント寄与率は,内反モーメント(KAM: knee adduction moment)の割合が有意に大きく,屈曲モーメント(KFM: knee flexion moment)の割合が有意に小さかった。
考察:KOAの重症例においては,高度の膝内反変形による長いレバーアームがKAMの寄与率が大きい要因と考えられた。また,膝屈曲可動域とKFMの寄与率が低いことから,大腿四頭筋力と膝関節機能の不良が示唆された。