目的:関節リウマチ(RA)患者に骨脆弱性があることは知られているが皮質骨幅に着目した報告はほとんどみられない。本研究ではRA患者の大腿骨皮質骨幅を定量評価し健常者との比較を行うことを目的とした。
対象と方法:TKAまたはTHAを要する関節破壊を呈した女性RA患者48例を対象とした。手術時平均年齢67歳,RA罹病期間平均14年,BMI 23.8,骨密度66.7%,DAS28-CRPは2.18だった。手術時の平均薬剤使用量はMTX 3.5mg/週,PSL 2.6mg/日だった。対象患者の術前下肢全長CT撮影を使用し,骨皮質測定softwareを用い大腿骨骨幹部を近位部1/3・中間部1/3・遠位部1/3に分け,それぞれの前方・後方・内側・外側に分けた計12か所で皮質骨幅を測定した。皮質骨幅を各個体の大腿骨長で除した標準化値を統計解析に用いた。皮質骨幅は健常群25例と正規性に従う場合はt検定,従わない場合はMann-Whitneyの検定を行った。健常群の平均年齢は67.7歳,平均BMIは23.7であり,RA群との有意差は認めなかった。RA群において,標準化された皮質骨幅値と各パラメータの相関分析を行った。P<0.05を統計学的有意差ありと判定した。SPSS softwareを統計分析に用いた。
結果:大腿骨皮質骨幅標準化値は遠位部前方(標準化DA)でRA群8.72,健常群11.11(P<0.001),遠位部内側方(標準化DM)でRA群9.81,健常群11.55(P<0.001)とRA群は健常群よりも有意に薄かった。一方,近位部前方(標準化PA)でRA群13.61,健常群12.86(P<0.01),近位部外側方(標準化PL)でRA群15.66,健常群13.64(P<0.01)とRA群は健常群よりも有意に厚かった。RA群手術側(患側)のみでの検討では標準化DAと標準化DMでRA群は有意に薄く,標準化PLでRA群が有意に厚かった。RA群の大腿骨皮質骨幅標準化値は骨密度と有意な正の相関を認めた。
DAS28-CRPと標準化PP(R=−0.218,P=0.035),標準化PM(R=−0.206,P=0.047),標準化CA(R=−0.260,P=0.011),標準化CM(R=−0.251,P=0.015)では,有意な弱い負の相関を認めた。
結論:RA患者の高度膝関節破壊および股関節破壊症例において,大腿骨皮質骨幅は遠位部前方,遠位部内側方で有意に薄く,近位部外側方で有意に厚かった。骨密度と有意な相関を認めたが,疾患活動性とは強い負の相関があるとは言えなかった。
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