2024 年 43 巻 3 号 p. 298-303
目的:関節リウマチ(RA)患者では骨粗鬆症を合併しやすく,骨吸収抑制薬の長期使用は骨代謝回転過剰抑制(SSBT)により非定型大腿骨骨折(AFF)を誘発する。RA患者で骨吸収抑制薬のビスホスホネート(BP)を長期内服中にAFFを発症した5例を経験した。これら症例における内服薬,骨密度,骨代謝マーカーなどを調査したので報告する。
方法:男性1例,女性4例,平均年齢72.4歳,RA罹病期間は平均15.6年,全例転子下骨折。使用薬はBP,プレドニゾロン(PSL),活性化ビタミンD(acVD)の使用を評価した。骨密度は腰椎,大腿骨頚部で評価した。骨代謝マーカーは血清P1NP,TRACP-5bを4例,尿中NTXを1例で評価,その他血清25ヒドロキシビタミンD(25OHVD)を3例で評価した。
結果:全例5年以上BPを使用,4例でPSLを長期間使用。acVDを1例で使用。骨密度のYoung Adult Mean(YAM)値の平均は大腿骨頚部72.8%,腰椎90.2%。血清P1NPは平均18.2ng/mLで検査した全例基準値以下,TRACP-5bは平均249 nU/dLで検査した全例基準値範囲内,尿中NTXは39.1 nmolBSC/Lで基準値範囲内。血清25OHVDは平均12.4ng/mLで全例基準値以下。
考察:本症例群はBP長期使用で骨形成マーカーが基準値以下に抑制されSSBTに至っていた。PSL使用は骨形成抑制,ビタミンDの欠乏は骨石灰化抑制が起こりやすく,これらもAFFが発症しやすい要因と考えられた。