2025 年 44 巻 1 号 p. 9-16
目的:酸化ストレスによる軟骨細胞機能低下が変形性膝関節症(KOA)発症や進行要因の1つとされるが,ヒトにおいてKOA進行と酸化ストレスの関連についての報告はない。本研究の目的は地域一般住民において,酸化ストレスとKOA進行の関連について検討することである。
方法:対象は2017/2018年の北海道八雲町運動器検診受診者の内,活性酸素種量を示す酸化ストレス度(d-ROMs)を測定し,5年後の検診も受診した95例(平均年齢64.2歳,平均BMI23.4,女性52例)とした。計測ソフト(KOACAD)で関節列隙最小距離(mJSW)を計測した。d-ROMsを中央値(320 U.CARR)で2群に分け,5年後と初回受診時のmJSWの差との関連について比較した。また,内側mJSWの1 mm以上狭小化をKOA進行と定義し,その危険因子について多変量解析を行った。
結果:初回受診時の内外側の関節裂隙距離はd-ROMs高値群は低値群より有意に狭く(P≦0.01),d-ROMs高値は5年後の内側mJSWの狭小化と関連した(低値群/高値群,0.09 mm/0.70 mm,P=0.004)。多変量解析を行うと,d-ROMs ≥ 320 U.CARR (P=0.014,オッズ比2.63,95%信頼区間1.21-5.70)とBMI,mJSW が独立したKOA進行の危険因子であった。
考察:血液中の活性酸素種量が初回受診時の関節裂隙狭小化と5年後の関節列隙狭小化の進行と関連を認めた。活性酸素種量の増加がKOA進行に関連し,重要な因子であると示唆された。