抄録
本研究は,睡眠時の眼球運動の多様性を評価するために,標準的睡眠ポリグラフィに基づいた22夜の眼電図記録に移動式直線回帰分析を適用し,入眠状態とレム睡眠における眼球運動を自動計測した。
特徴抽出パラメータの分析により,眼球運動をREMsとSEMsに分ける伝統的な2分法は十分でなく,REMsとSEMsの物理特性を部分的にもつ中間型の眼球運動IMEsの追加が必要であることが判明した。IMEsは粗大眼球運動GEMsと立ち上りが鋭角なSEMsから構成された。これら多様な眼球運動は共通してみられたが,入眠状態とレム睡眠によってその現れ方は異なった。入眠状態ではSEMs優位であったが,SEMsとREMsはともに時間の関数として減少した。レム睡眠ではREMsの群発期が1つ2つ生じるが,SEMsはREMs群発と非群発にかかわらず持続的に出現した。
以上の結果は,入眠状態とレム睡眠中に眼球運動の多様性が共通して生じ,睡眠状態によってその現れ方が異なることを裏づけているのであろう。睡眠時眼球運動の発現機序および眼球運動と夢見の視覚心像の関係について考察した。