抄録
本研究では,起床前漸増光照射における被験者が受光する光量と起床前の睡眠状態とに着目し,それらが起床時の眠気におよぼす影響について,20名の若年成人男性を被験者とし終夜睡眠実験を実施し検証した.評価項目はPSGによる睡眠ステージと起床時睡眠調査票OSAによる起床時の眠気とし,起床前漸増光照射の受光量は1秒毎の寝姿勢から推算した.起床設定時刻30分前から漸増光を照射する条件と照射のない条件の2条件を比較した.その結果,起床前の漸増光受光量が多い群では,照射なし条件と比較して,照射あり条件はOSAⅠ起床時眠気スコアが有意に高く眠気が低減する傾向にあるが,照射量の少ない群では条件間に有意差はみられなかった.
また,起床前の睡眠状態がNREM睡眠の群では,照射なし条件と比較してOSAⅠ起床時眠気スコアに有意差がみられ,照射あり条件の眠気が低減されるが,REM睡眠Phasic期から起床した群では,条件間に有意差はみられなかった.REM睡眠Phasic期から起床した被験者を除くと,漸増光受光量とOSAⅠ起床時眠気スコアとの間に有意な正の中程度の相関関係がみられ,受光量が多いほどOSAⅠ起床時眠気スコアが高く,眠気が減ることが示された.以上のことから,起床時の眠気を低減させるためには,十分な起床前の漸増光受光に加えREM睡眠Phasic期ではない睡眠状態から起床することが必要であると考えられる.