抄録
オオヤマカワゲラの幼虫は低酸素濃度(DO)や流速の遅いといった低酸素条件下では腕立て伏せ運動をすることが知られている。我々は、以前この腕立て伏せ運動の頻度と酸素条件の関係を調べた。それによると、「酸素供給量」を「DO×流速」と定義したとき、カワゲラが腕立て伏せをしなくてすむ最小酸素供給量には夏と冬で理論上違いがないことが導かれた。これはDOの低い夏には、流速の遅いところには生息できない可能性を示している。本研究ではこの仮説を受けて、実際に野外の河川でオオヤマカワゲラの河川内分布に夏と冬で違いがあるかを調べた。その結果、冬には流速にかかわらず河川内ほぼ至るところに分布していたが、夏には流速の速いところに偏って分布していた。