抄録
近年,日本各地の沿岸域で漁場環境の悪化が報告されており,その原因として森林や河川環境の変化が指摘されている.本研究は土佐湾に注ぐ河川の中で最も流量の多い四万十川を対象とし,上流から下流に至る栄養塩濃度の変化およびそれらの海域への供給量と沿岸海域の基礎生産との関連を把握することを目的とし,2003年11月より調査を開始した.四万十川下流部のSiO2の季節的変動は(2004年6月現在),NO3+NO2およびPO4に比べて小さく,沿岸域のSiの安定した供給源となっていると考えられた.また,四万十川の影響が及ぶと考えられる地点とその影響下にない地点とのChl a量を比べると,僅かに前者が高い状態で推移した.