抄録
琵琶湖の沿岸帯では1950年代までは広く沈水植物が分布していた。しかしその後の富栄養化かに伴う透明度の低下などにより群落面積は減少し,特に水質の悪化が著しかった南湖では1980年代から1990年代前半にはほとんど沈水植物群落が見られなくなっていた。そうした中,1994年夏にー123cmという水位低下が起こり,その後,南湖を中心に水草帯が急速に回復を始め,2000年夏には,南湖面積の52%で沈水植物群落がみられる状態となった。その増加傾向は現在も継続している。水草帯の回復に伴ない,透明度の回復,クロロフィルa,T-P,T-Nの減少が起こった。水草帯の回復や水質改善の機構はまだ明らかではないが,水草帯の回復によって南湖の生態系に大きな変化が生じてきていると考えられる。