抄録
京都市深泥池の生物群集は現在も極めて多くの希少種を擁しており,その貴重さは特筆に値する.しかし,生物相や池の物理化学的環境条件はここ25年間に大きく変容している.その根本原因として,長期に渡る水道水の流入,水生植物の過剰繁茂による富栄養化,遺骸堆積による底泥の貧酸素化と水生植物群落の乾陸化が挙げられるが,同時に外来動植物の放逐と蔓延がこの変化に拍車をかけたと考えられる.このような現状に対して,効果的な保全策を実施するためには,水循環の構造を改善する行政レベルの対策と,日頃池の変化を監視し外来種を地道に駆除する市民参加型の対策の双方が必要である.