抄録
琵琶湖周辺に点在する湿地帯である内湖の生態学的復元の可能性を探るため、かつての内湖で現在は干拓され、農地となっている早崎干拓地で2001年秋から通年湛水を行い、生物相の変遷過程を調査した。その結果、様々な絶滅危惧植物や貴重植物が出現し、干拓地が貴重植物のシードバンクとしての機能を維持していることが明らかとなった。さらに湿地を利用する鳥類の種数も著しく増加した。しかし魚類等の水生動物相は、メダカなど生活史の中で水田や河川を利用する動物が増加したにとどまり、琵琶湖と内湖を利用するいくつかの動物は出現しなかった。