日本図書館情報学会誌
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論文
J.テーフスの民衆図書館論 : 民衆教育と社会民主主義のあいだの思想
河井 弘志
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2002 年 47 巻 3 号 p. 97-112

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抄録

19世紀のドイツの民衆図書館は,下層民衆を対象とする貧民給食所のような慈善図書館であり,英米の影響を受けたネレンベルクらは,これを全住民を対象とする図書館に変革しようとした。民衆教育普及協会事務局長ヨハネス・テーフスは,下層民衆のための民衆図書館の普及に力を注いだ1人であった。彼は社会民主主義の影響を受け,下層民衆と労働者の教育の充実につとめ,民衆学校とギムナジウムに二分する複線型学校制度を批判した。のちにネレンベルクらの影響によって全住民のための民衆図書館論に転換し,閲覧室つきの図書会館を主張し,図書館の中立性を守るために公立化を回避し,有料制もやむをえないと言った。しかしテーフスのとらえた全住民の中心には常に下層民衆があり,これが彼の民衆図書館思想を根底から規定していたようである。

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