日本図書館情報学会誌
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論文
公共図書館における住民との関係性 : 『公立図書館の任務と目標:解説』の分析を通して
荻原 幸子
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ジャーナル オープンアクセス

2007 年 53 巻 4 号 p. 193-215

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抄録

行政学における行政・住民関係論の近年の動向である「協働」の観点から,公共図書館経営論における図書館・住民関係の,特に図書館側の住民に対する考え方とその変化について検討した。まず,近年の行政・住民関係論において,「参加」から「協働」への転換期という認識が高まっていることを指摘した。次に,『公立図書館の任務と目標:解説』の分析を通して,図書館側の住民に対する規範的な考え方が,九つに類型化されること,及び,そのうち三つの類型以外には「協働」「参加」の概念は含まれていないことを明らかにした。すなわち,その内容は「非住民参加」による運営を指向するものであり,住民との関係という側面では,公共図書館経営は行政学との整合性に乏しい状況にあるといえる。しかしながら,『公立図書館の任務と目標』策定以降の図書館・住民関係の議論においては,現状の再検討や新たな可能性を追究する必要性が指摘されており,そこに「協働」指向が内在することも見出した。最後に,これらの結果をふまえて,「協働」指向の図書館・住民関係への展望を考察した。

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