2008 年 54 巻 1 号 p. 16-38
本稿では,大・中・小の規模の異なる複数の図書館が存在する地域において,図書館利用者がどのような理由で利用館を選択し,利用行動をしているのかについて,自宅からの最近隣館と主利用館とを軸とした類型を基に分析し,類型ごとの特性を明らかにした。また,札幌市北区・手稲区の住民がどのような条件下で大規模館を選択利用しているかについて,遠方の大規模館あるいは最寄りの中小規模館のどちらを選択するかを選択肢に,7種の説明変数を用いた二項ロジットモデルにより検証した。図書館利用が個人行動から「家族と一緒に自家用車で行く」行動に変化したことが,距離に対する抵抗を大幅に減じさせ,施設までの距離と規模,サービス内容の階層的な施設構成手法の基本が適用しない状況を生み出していることが検証できた。