2016 年 62 巻 4 号 p. 221-241
2003 年の地方自治法の改正により,指定管理者制度に基づく公の施設の運営が可能になったが,公立図書館への同制度の導入については否定的な意見も見受けられる。だが,その実態を表す研究は極めて少ない。そこで本研究では,公立図書館における指定管理者制度の実態を明らかにする一環として,レファレンスサービスに焦点を当て,同制度を導入している図書館(以下,指定館)と導入していない図書館(以下,直営館)のサービス実施状況やレファレンス質問の受付件数の異同,及び制度導入後の質問受付件数の変化を明らかにした。結果,指定館は直営館より,利用者が自分で情報を調べられる環境作りや教育に積極的であること,逆に直営館は指定館より,利用者の質問に直接答えようとする傾向が強い可能性が示された。また,指定館の方が直営館に比べ質問受付件数が多く,制度導入後に質問受付件数が増加していることが分かった。