2018 年 64 巻 3 号 p. 83-98
図書館所蔵が書籍市場に与える影響を検証した。古書市場を対象とし,サンプルとして 2004 年の4 月から6 月にかけて発行された234 点の教養新書を採りあげ,図書館における所蔵数の違いが古書価格の差と関連があるか否かを調べた。方法として,古書価格は需要と供給で決定されると仮定し,供給のうちに図書館所蔵数を含めて重回帰分析を施した。 従属変数となる古書価格の指標として,Amazon.co.jp のマーケットプレイスとほか二つのオンライン古書店の価格を用いた。独立変数には,需要としてAmazonのランキング順位を,古書の供給数としてオンライン古書店での出店数を,図書館による供給数として日本全国の公共図書館の所蔵冊数および大学図書館の所蔵館数を合計した数値を用いた。このほか図書館所蔵数とAmazon ランキングの交差項も加えた。結果として,図書館所蔵数単独での価格への影響はプラスとなることが明らかになった。しかし,所蔵も需要もともに多い書籍については価格へのマイナスの影響がある可能性も観察された。