2025 年 71 巻 3 号 p. 141-152
公立図書館では,課題解決支援サービスの一環として健康医療分野のサービスを提供するところが増えている。本研究では,市民の健康医療分野図書の入手可能性を明らかにするために,4県内の図書館の図書所蔵と利用状況を調査した。全国書誌からランダムサンプリングで抽出した1万点の図書について,千葉県,神奈川県,和歌山県,高知県の各県内図書館の所蔵及び利用状況と選書ツールとの関係を調査した。結果,相互貸借網に大学図書館等が加わることで提供可能点数は大幅に増加することが明らかとなった。また,県立図書館,大学図書館等は質の高い図書を所蔵する傾向が強いこと,貸出は出版年が新しいほど多いこと,質の高い図書も比較的よく貸し出されること,などがわかった。県立図書館は,県内における信頼できる図書の提供や相互貸借網の構築など,市民の図書入手において重要な役割を果たしていることが明らかになった。