2026 年 72 巻 2 号 p. 84-98
本研究は,デジタルアーカイブ(DA)評価のための理論的基盤が未確立である現状に鑑み,Luciano Floridiが提唱する「情報の哲学(PI)」及び「情報倫理(IE)」の理論に基づくDA評価の概念的フレームワークを提案する。PIの存在論的・認識論的前提のもとで情報圏のウェルビーイングを追求する規範倫理がIEである。IEは,悪であるエントロピーの大小に還元される一元的価値基準に基づいており,また人工的エージェント及び分散的道徳性の概念により,人工物を含む複合的実体の倫理評価を可能とする特性を持つため,多要素からなる複合的実体であるDA評価への親和性が高い。提案する概念的フレームワークは,PIの主要な方法論である「抽象化レベルの手法」を援用した三階層構造を採用し,評価の文脈に応じた調整と,各評価観点におけるエントロピーの定義によって,評価の一貫性を保ちつつ多元的かつ柔軟な評価を実現する。本研究は,DAの評価ツールの理論的基盤を提案するとともに,PI及びIEの新たな応用可能性を示すものである。