抄録
【目的】限られたスペースに文字を配置するために文字を縦長(長体)にしたり、横長(平体)にしたりする工夫がなされるが、この工夫は通常デザイナの感覚に頼って行われており、データに基づいたデザインがなされていない。そこで本研究では、ひらがなを用いて縦横比が1/5から5倍という広い範囲の長体化、平体化について文字の縦横比が視認性にどのように影響をするかを定量的に検討した。
【対象と方法】刺激にはひらがな清音46文字、モリサワ新ゴシックLを使用し、縦横比0.2-4.96の範囲を対数間隔で9段階に変化させた。刺激の平均輝度は105cd/m2でコントラスト98%の黒い文字を提示し、それぞれの縦横比ごとに実験を行った。手続きはまず調整法で正答率が100%の大きさと0%となる大きさを決めた。その後、その間で対数間隔7段階に大きさを変化させたランダムな文字を音読する試行を20回行い、そこから正答率が50%になる閾値文字サイズを推定し、視認性の指標とした。被験者は裸眼または矯正で小数視力1.0以上の視覚正常の日本人20人であった。
【結果】閾値文字サイズの高さと幅から求めた面積の幾何平均を行い、縦横比を要因とした一元配置の分散分析を行った結果、閾値文字サイズに対する縦横比の主効果は有意であった (F(8,152)=46.753,p<.001)。
【考察】辺の長さで見た閾値文字サイズは縦横比が1:1の正体のとき視認性が一番高い事が分かり、これは同様の手続きで行ったカタカナの結果と同じであった。しかし、幾何平均から求めた閾値文字サイズで見るとひらがなは1:1.49の若干平体のときの視認性が最も高く、見慣れた縦横比において視認性が高くなる傾向が示唆された。