日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
第10回日本ロービジョン学会学術総会
セッションID: W203
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ワークショップⅡ
LD児への視覚認知支援の具体例
*菅原 素子
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抄録


 事例【視覚認知(空間認知と記憶)に課題をもつ児童の漢字の指導について】
 漢字の学習につまづきのある小学3年生の児童は、小学1年生の漢字も読み・書くことができないという主訴で本校教育相談に来校した。知的な遅れはなく、ADHDでLD傾向があるとの診断を受け、情緒障害学級に通級していた児童である。WISC-Ⅲの結果やフロスティッグ視知覚発達検査の結果から、短期記憶と空間関係に課題があり、書き写す学習の困難さが予想された。また、継次処理よりも同時処理が優位な可能性が考えられた。以上の結果を踏まえていくつかの学習方法を実施し比較した結果、「漢字九九カード」と「漢字欠損カード」を組み合わせた学習方法がもっとも高い正答率だった。これは、『空間認知の弱さから全体をとらえることは難しくても、パーツに分け視覚刺激を減らすことで覚えることができるようになったこと。加えて短期記憶は苦手だがストーリー性をもたせ意味づけをすることで記憶を助けることができたこと。』による結果であると思われた。この方法で漢字を学習し、合わせてフロスティッグ視知覚学習ブックに準じたトレーニングドリルを行うことにした。その結果、漢字の学習がスムーズに進み、情緒障害学級の担任に指導の様子を参観してもらった上で、指導方法と教材を引き継ぎ、教育相談を終了した。

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© 2009 日本ロービジョン学会
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