日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
第10回日本ロービジョン学会学術総会
セッションID: H401
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口演Ⅳ
休職後に職場復帰した視覚障害者
*高橋 広山田 信也工藤 正一
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抄録


【目的】視覚障害者の労働環境は非常に厳しく、雇用の継続に力を注ぐべきだとされている。このため、職業リハビリテーションが重要であると言われているが、休職を経て職場復帰できた事例の検証からみえてきたことを報告する。

【方法】1996年よりロービジョンケア(以下LVCとす)を産業医科大学病院で開始し、その後も柳川リハビリテーション病院や北九州市立総合療育センターなどにてLVCを積極的に行っている。その間、就労問題をもつ視覚障害者を数多く経験してきたが、休職を経て職場復帰できた11事例を後方視的に検討した。

【結果】休職後職場復帰できた11事例の中には、LVC開始後最短3か月で職場復帰した例もあったが3年かかった事例もあった。これは障害の程度以外に、職場環境、特に必要なコンピュータ技術の差にも左右された。したがって、自己のコンピュータ能力向上を図るとともに会社との連絡を密にとり、必要な高度の職業訓練を受けた事例もあった。無論、彼らは必要なら白杖歩行など生活訓練を受けており、全員安全に職場への単独通勤が可能であった。

【考察】視覚障害者がLVCにたどり着いた時には,すでに退職や休職していることが多く、就労意欲も乏しくなっている。このためLVCをも十分にできないことも多いが、職場復帰できた11事例には働きたいという強い意思があった。それゆえ、早期に労働関係機関や支援団体につなぎ、苦しい職業リハビリテーションを乗り越えられた。また、会社の上司や同僚など周囲への調整能力も持っていたが、視覚障害者として全てが初めのことで、どのように対応すればよいか戸惑いが多く、彼らを支える者の力も大である。

【結論】眼科におけるLVCは、視覚障害者が就労や雇用維持する上での大きな窓口の一つで、積極的に他職種や支援者と連携し、職業リハビリテーションを行えるよう支援していくべきである。

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