日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
第6回日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集/第14回視覚障害リハビリテーション研究発表大会
セッションID: P_I_
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ポスターセッション_I_
障害の受容と連携 -両眼眼球破裂した1例-
*高橋  広久保 恵子室岡 明美山田 信也工藤 正一
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抄録

【目的】視覚障害者の就労問題は現在のわが国の経済状況ではより厳しい環境に置かれている.そこで、我々は雇用の継続に力を注ぐべきであると報告した.今回,労働災害にて両眼眼球破裂した事例の障害受容過程と職場復帰に向けての取り組みを報告する.【事例】30歳代,男性,建設会社現場監督.2004年5月,鉄パイプが落下し,開放性頭蓋骨骨折,脳挫傷を負い,両眼も眼球破裂し,緊急手術された.創傷が癒えるのを待ち,7月視覚を含めたリハビリテーションのため転院してきた.顔面を触ることに極度の恐怖を訴え,両眼は眼球癆で,光覚もなかった.開口障害と四肢の筋力が低下していたので,理学療法,作業療法や言語聴覚療法を行うことになった.全てが全面介助で,訓練士や看護師は,一つひとつを言葉で説明し,音や触知覚で一つひとつを確認していった.このように非言語コミュニケーションを獲得し,心も安定していった.また,中途視覚障害者の復職を考える会(タートルの会)の本を音声パソコンや朗読で聴いた.8月末になると,本人が「自分はロービジョンケアのため入院している」と言い出した.身体障害者手帳1級の申請をし,9月タートルの会の会員夫妻,患者と妻の4人で会い,障害者職業センターにも繋いだ.こうして,視覚障害者も生活が営め,仕事もできることを実感していった.さらなる日常生活訓練や職業リハビリテーションが必要不可欠で,その支援を会社にも要請した.そして,歩行訓練の希望がで,ついに10月白杖を持ち,11月から点字訓練も始まり笑顔も戻った.両眼に義眼を入れ,表情もさらに豊になり,2005年春,職場復帰への新たな一歩を踏み出した.【結果および結論】ある日突然襲った外傷による障害の受容は非常に難しく,この受容過程における眼科医療の支援,ロービジョンケアは重要である.そして,その後の職業リハビリテーションへ積極的に繋ぐのは大きな使命と考える.

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© 2005 日本ロービジョン学会
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