日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
第6回日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集/第14回視覚障害リハビリテーション研究発表大会
セッションID: S1-2
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網膜色素変性
網膜色素変性:ロービジョンケアの要点
*中西 勉
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抄録

ソーシャルワークと生活訓練の観点から述べたい。重要なことは福祉的情報の提供や行動についてのテクニックを身につけるだけではなく、それらを通して網膜色素変性の患者を「不安の軽減と可能性についての気づき」へと方向付けていくことである。
網膜色素変性は長期間に渡り視機能低下が続くので、それに伴う恐れや不安が出現する。さらに、遺伝についての不安、自分だけがなぜこの病気に!といった怒りや孤立感、経済的問超などの不安も起こる。また、物事がやりにくくなることへの戸惑い、見えづらさを家族にわかってもらえない苛立ちなども起こる。
ソーシャルワークでは、患者に必要な情報提供や社会資源への橋渡しなどで不安や困難さを軽減できるようにする。とくに網膜色素変性のソーシャルワークでは患者本人の見えづらさを、具体例を挙げて家族に説明することもある。さらに必要に応じて患者会などの紹介もする。これらの説明や紹介などが患者の孤立感の軽減にもつながる。視機能の変化で不自由さの程度が変わる。そのため必要があれば何回でも相談を受けるという担当者の姿勢が重要であり、それが不安の軽減にもつながる。
生活訓練は生活に関する技術を身につけることだけが目的ではない。日常的なことが行えるようになるので、自分に自信がついたり不安が軽減されることがある。訓練という場で可能性を発見する援助を行っているのである。
視覚障害になった人の相談にのる人や場所が少ない。同じ網膜色素変性の患者に会い日常の工夫や気持ちを聞きたい時や、専門的な情報を求め専門家に相談したい時もあろう。相談相手や場所の種類は患者のニーズにより複数の選択肢が必要である。私はこの「場(場所)」、「人」が重要であると考える。
網膜色素変性の患者にとって長期間に渡って対応してくれる人や場所、場が必要であり、そこでの対応は不安や不自由さの軽減および自らの可能性に気づくことにつながるであろう。

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© 2005 日本ロービジョン学会・日本視覚障害リハビリテーション協会
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