日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
第7回日本ロービジョン学会学術総会・第15回視覚障害リハビリテーション研究発表大会合同会議 プログラム・抄録集
セッションID: SI-4
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シンポジウム I
「今、視覚障害者の就労の課題は何か? 半年前から現在、そして半年後」
*北林 裕
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抄録
 私の所属している施設では、今年3月までと現在とでは運営そのものが大幅に変わっている。自助努力の範疇を大きく超え、利用者サービスは低下した。その中で、利用者の数は2割強膨れ上がろうとしている。すると当然一人ひとりに対してのサービスは著しく減退していくであろう。
 授産施設では、テープ起こしを中心とした仕事を提供している。1990年から利用者の中の若手を中心に、そのテープ起こし技術を核に、一般就労に向けた訓練(事務処理スキルの向上)を始め、10人余の新規採用者及び現職復帰者を送り出した。成果が認められ、4年後と7年後には「事務処理科」「OA実務科」という2つの独立した施設が立ち上がった。そこでは、2人の指導員を配置したが、うち1人は授産施設の職員を専属で指導にあたらせた。
 この意味では、自立支援法が成立する前から、国の指導であるところの「就労移行支援と就労継続支援との分離」を、私の所属している小さな施設の中で、すでに先駆的に行っていたと自負している。そして、毎年10人程度ではあるが、新規採用、継続雇用を果たしてきた。
 しかしながら今年4月の法改正により、「事務処理科」「OA実務科」への授産施設職員の配置は、経営上不可能となった。「もともと授産施設の職員が一般就労支援施設の指導にあたるのこと自体がおかしい」との意見が施設内にも根強くあるが、私は「一般就労をゴールに見据えた授産施設でなければならない」という立場である。その部分においては、10月から施行される自立支援法の目指すところは賛成の立場と言える。しかし実態は、職員の数が減りサービスの低下を余儀なくされた現状の中で、国の考える理想型は机上の空論にすぎないのではないかと思わざるを得ない。現状、欠けた1人分の穴は、休日と時間外で埋めざるを得ない。しかし、それにも限界がある。
 私は、就職率を上げることよりも定着率を上げることの方が、大切だと思っている。そのためには、就職後のフォローアップが一番大切ではないだろうか。当事者も受け入れ側も安心できる態勢とは、就職後に情報機器等も含めた環境の変化があってもすぐに相談出来るという、施設との信頼関係も大きな要素であると思っている。そうした考えをも、この自立支援法によって否定されるのであれば、私は授産施設職員ではなくボランティアとして、一般就労に関わっていきたいと考えている。
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© 2006 日本ロービジョン学会・日本視覚障害リハビリテーション協会
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