抄録
本研究は、ロービジョン者を対象として視認性に大きく関わる基本特性である1.コントラスト感度、2.色の類似性領域を計測し、実験的な検討から見やすい視覚表事物の設計に関する規格作成および視覚機能のデータベースの確立を目的としている。今回はコントラスト特性について報告する。
実験ではPCにより周波数と輝度コントラストを調整した円状の縞模様を提示した。画像提示用に21インチCRTフラットパネルモニター、被験者の反応 (縞模様の方向判断) 用にキーボードを用いた。視距離は50cmとした。空間周波数は、0.01, 0.02, 0.06, 0.1, 0.2, 1, 2, 6, 10 (cycle/degree: CPD)の9種類とした。縞の方向は0, 45°,90 °, 135 °の4方向をランダムに提示した。提示時間は、1000msec 及び60msecとし、明所視条件として輝度40cd/m2、薄明視条件として輝度4cd/m2の2条件で行った。右眼、左眼、両眼で計測をした。
ロービジョン者は個人のばらつきが大きいが、全体的に高周波領域におけるコントラスト感度の低下が見られ、晴眼者(若年者)との差が大きい。また晴眼者の明所視では、3~5°cpd付近で感度の最大値となるが、ロービジョン者は、0.2_から_0.6cpd付近が最大値となる場合が多く、最大感度の低周波方向への移動が見られた。
今後は被験者数を増やし、視野や視力・混濁の程度等などの被験者の眼の状況とコントラスト感度特性との関連について検討したいと考える。