抄録
1.目的
近年、視覚障害をもつ人々が夜間外出する際、街路照明など光環境上の問題点が挙げられている。本研究は、ロービジョンの人々が公共空間を歩行する際に問題となる点を抽出し、安全且つ安心して外出できる公共空間の視環境計画の指針を得ることを目的とする。
2.調査概要
ロービジョンに関する情報交換を目的としたメーリングリスト参加者、及び各種福祉団体に所属する人の中で、視覚を利用して夜間に外出する人を対象として、web及びインタビューによるアンケート調査を行った。
3.調査結果
本調査より計77件の回答が得られ、網膜色素変性症(25名)、白内障(23名)などが疾患として挙げられた。昼間、屋外を歩行する際には、歩道・自転車道・車道が分離されていないことや、放置自転車や駐車車両に対する不快が多いことから、不特定の箇所に放置された障害物が歩行を困難にすることが明らかとなった。夜間では、昼間と同様の項目のほか、「照明が暗い」「暗がりがある」の回答が多く、光環境に対する不快が多かった。
夜間、屋外を歩行する際に、全回答者の約80_%_がコンビニなど商店からの光を、約半数の回答者が、街路灯、住宅施設等の門灯、自動販売機、交通信号機などの光を、視覚的手がかりにしており、歩行する道路に光が存在することが重要であることが示された。また、ガードレールや道路・横断歩道の白線を手がかりにする回答者も多く、反射率が高く直線状のものを、進行方向を知る手がかりとして利用していることがうかがえた。
街路における改善すべき光・視環境要素として、「街路灯を明るくする」「暗がりを生じさせない」「曲がり角を明るくする」「光を連続的に配置する」が多く挙げられ、連続的に明るい光環境を望んでいることがわかった。一方、「眩しいものを排除する」との回答もあり、単に路面照度を上げるだけでなく、グレア等にも配慮した照明計画が求められていることが示された。