主催: 日本ロービジョン学会, 視覚障害リハビリテーション協会
1. はじめに 本研究は、ロービジョン者に対するアンケート調査に続いて、その方々が街を歩行する際に問題となる点を抽出し、近年広まっているユニバーサルデザインの中で、すべての人が安全に安心して歩行できる環境整備の知見を得ることを目的とする。 本調査では、夜間歩行時の不安要素とランドマークについて、東京と大阪でロービジョン者8名を対象に実態把握に努めた。そのうち、東京で行った3名の調査結果について報告をする。 2. 調査概要 現地同行調査により、ロービジョン者が普段よく利用する駅から勤務先等までの経路の夜間歩行時におけるランドマークとなるもの、障害物、歩く際に気をつけていること等の内容のインタビューとその位置を記録した。また、ランドマークや障害物等の現地状況をビデオ、写真撮影すると供に、対象物及び対象地点の輝度、照度の物理量を測定記録した。 被験者の属性は、都内在住の網膜色素変性症の40歳前半男性2名。網膜はく離の40歳後半男性1名である。 3.調査結果 1)道路の白線:路上の白線は全員から街灯等の光の反射が大きく、発見しやすいとの評価を得たが、白線を発見するには適切な照度が必要なこともわかった。 2)街灯・看板等の照明:庭園灯や店舗の置き型看板(照明内臓)店舗等からの木漏れ灯等目線より低い位置にある照明が認識しやすく、反対に国道等の高規格道路に設置されるような高い位置にある輝度の高い照明は、低い位置にある照明との位置関係が取りにくくなるためランドマークにしにくいことがわかった。 3)触覚的に確認できる事物:光を放っているものだけでなく、グレーチング、縁石、壁面等、触覚を利用するものもある。 3.おわりに ロービジョン者は足元付近にある様々な事物を歩行の手がかりにしていることがわかった。特に低い位置の光は、有効と考えられる。このことからユニバーサルデザインの考え方を踏まえた街路照明及び街路環境の新たな提案が期待できると考えている。